
賃貸マンションを主軸にインカム型を主とした手堅いファンド運営を行っていたわかちあいファンド。2019年からクラウドファンディング事業を開始し、拠点である滋賀県を中心に評価を集めていました。
しかしながら、今年の4月29 日、同社のホームページで「わかちあいファンド旧軽井沢大樹の森」シリーズの4ファンドに対しての償還遅延のお知らせが掲示。
5月27日にも「わかちあい東近江ウイングⅠ」で再び償還遅延の旨が載せられました。
堅実な運営に定評があったわかちあいファンド。一体なにがあったのでしょうか。
本記事ではわかちあいファンド旧軽井沢大樹の森の償還遅延をメインに説明します。
わかちあいファンドの基本情報
会社情報
- 会社:株式会社日本プロパティシステムズ
- 代表:森田 康弘
- 設立:2000年9月
- 不動産特定共同事業免許:滋賀県
わかちあいファンドを運営しているのは、株式会社日本プロパティシステムズで、今年で26年目を迎える会社です。
主な事業としては、不動産の売買や仲介、運用、管理などを行う不動産会社ですが、現在は不動産クラウドファンディング業が主力の1つとなっているようです。
わかちあいファンドの始動
わかちあいファンドは2019年7月に不動産特定共同事業の免許を取得し、不動産クラウドファンディング事業をスタートさせました。
初号ファンドは予定念分配利率6.3%、運用期間が3年間のテナント料や家賃収入を生む収益不動産を小口化したインカム型ファンド。
同サービスはリリース直後から注目を集め、初号ファンドは想定を上回る申し込みがあり、抽選式にも関わらず、当初予定していた募集期間より早く申し込みを終了しました。
結果的にも、無事償還され、初号ファンドは大成功を収めました。
償還遅延の発生
堅実な運営で、初号ファンドを含め多くのファンドを予定利回りで償還し、実績と信頼を勝ち取ってきたわかちあいファンドですが、2026年に入って複数案件の償還遅延と運用期間延長が発生します。
まず、償還遅延が発生したファンドについて1つずつ説明していきます。
わかちあいファンド旧軽井沢大樹の森
初の償還遅延はこのシリーズファンドの第Ⅱ期からになります。第Ⅰ期から第Ⅵ期まであるので、順を追って説明します。
- 第Ⅰ期
(本来第Ⅰ期という表記はないのですが、便宜上第Ⅰ期と呼ばせていただきます)第1次募集開始日 2023年7月28日
(8月4日完売のお知らせ掲示)第2次募集開始日 8月24日(同日完売) 募集金額 1憶6500万円 運用期間 2023年10月1日~2024年9月30日(12カ月) 利回り 7.0%
こちらは、当初の予定では長野県の旧軽井沢の土地を取得し、整地後に売却するというファンドで、第1次募集では優先出資1憶4,000万円を募集し、第2次では残額2500万円を募りました。
こちらは無事償還されました。
しかしながら、悲劇は第Ⅱ期以降で起こりました。
- 第Ⅱ期
第1次募集開始日 2024年9月17日 募集金額 2憶6500万円 運用期間 2024年10月1日~2026年3月31日(18カ月) 利回り 8.0%
当初第Ⅰ期ファンドを土地販売中心で行う計画でしたが、計画を大幅に変更し、第Ⅱ期では、高級別荘建築資金調達するためのファンドとして再募集をかけました。
- 第Ⅲ期
第1次募集開始日 2024年12月6日 募集金額 1憶円 運用期間 2025年1月1日~2026年3月31日(15カ月) 利回り 7.5%
こちらも第Ⅱ期に引き続き建築資金ファンドとして募集をかけました。
- 第Ⅳ期
第1次募集開始日 2025年2月7日 募集金額 3憶3200万円 運用期間 2025年2月7日~2026年3月31日(13カ月) 利回り 7.0%
続く第Ⅳ期も建築工事進捗に応じ、建築資金を追加で調達する目的の募集です。
この時すでに、「ファンド対象物件の別荘についてはすでに引き合いがあり、竣工前に売買契約が成立する可能性があります。この場合、償還時期が1~2カ月早まることがあります。」と記載がありました。
↑わかちあいファンド公式HP 旧軽井沢大樹の森第Ⅳ期の説明にて
- 第Ⅴ期
第1次募集開始日 2025年7月7日 募集金額 1憶1800万円 運用期間 2025年8月1日~2026年3月31日(8カ月) 利回り 7.0%
第Ⅴ期は「最終募集」と明記されていました。
さらに、「この物件についてもすでに引き合いがあり、竣工前に売買契約が成立する可能性があります。この場合、償還時期が1~2カ月早まることがあります。」と記載。
しかし…
- 第Ⅵ期
第1次募集開始日 2026年2月26日 募集金額 5億8300万円 運用期間 2026年5月1日~2027年3月31日予定(11カ月) 利回り 当初8.0%
→12.0%へ条件変更
なんと、最終募集かに思われた第Ⅴ期のあとに追加募集ファンドが組成されました。
引き続き「旧軽井沢大樹の森」プロジェクトを完成・売却するための資金調達とあり、限定キャンペーンなどを実施し資金集めに奔走している様子でしたが、結果的に募集金額は集まりませんでした。
このファンドの違和感
当該ファンドは、開発型の再組成ファンドで、ある程度リスクのある案件ではありますが、その上でもいくつかの点で違和感を感じたので、下記にまとめます。
途中の大幅な事業計画変更
当初の募集時点で示されていた事業計画から、途中で計画が大きく変更されている点は気になります。
開発案件では計画変更自体は珍しくありませんが、複数回にわたって投資家から資金を募っている以上、当初計画との違いや変更に至った経緯、それによって工期・収支・償還可能性にどのような影響が生じるのかについて、より明確な説明があってもよかったのではないかと感じます。
↑わかちあいファンド公式HP 旧軽井沢大樹の森第Ⅱ期の説明にて
なぜ6回まで追加募集が続いたのか(主に建築資金)
特に疑問が残るのが、建築資金などを目的として追加募集が繰り返され、第6回まで募集が続いた点です。
当初の資金計画に対して、なぜこれほど継続的に追加資金が必要になったのかは確認しておきたいポイントです。
工事費の増加や計画変更など合理的な事情があったとしても、募集回数が重なるにつれて、当初想定していた総事業費や資金調達計画との乖離がどの程度生じていたのかが気になります。
ホームページ上では順調に見えた工事が遅れた理由
公式ホームページなどで公開されていた情報を見る限り、工事は一定程度順調に進んでいるようにも見えました。
それだけに、結果として償還に影響するほどスケジュールが遅れたのであれば、いつ、どの段階で遅延要因が発生していたのかが気になります。
実際の工事進捗と投資家が公開情報から受け取る印象との間にギャップがなかったのか、また遅延リスクが認識された段階で十分な情報開示が行われていたのかは検証したいところです。
最終募集の第Ⅴ期が終わった後の第Ⅵ期ファンド
第Ⅴ期が「最終募集」とされていたにもかかわらず、その後に第Ⅵ期ファンドが募集された点です。
もちろん、その後に追加の資金需要が発生した可能性はあります。
しかし、なぜ「最終」としていた募集の後に再び資金調達が必要になったのか、その間に事業計画や資金繰りにどのような変化があったのかについては、投資家として気になる部分ではないでしょうか。
↑わかちあいファンド公式HP 旧軽井沢大樹の森第Ⅴ期の説明にて
個人的な見解
以下に記述する内容は、あくまで公開されている情報をもとにした筆者個人の見解・推測であり、第Ⅵ期で集められた資金が実際にどのように使用されたのかを断定するものではありません。
そのうえで、今回の一連の募集を時系列で確認すると、筆者としては資金計画についていくつか疑問が残ります。
まず、事業途中で当初から大きな計画変更が行われ、その後、建築資金などを目的とした追加募集が第Ⅵ期まで繰り返されています。
この経緯を見ると、計画変更によって必要資金が当初の想定を上回り、結果として追加の資金調達を繰り返す必要が生じたのではないか、という疑念がよぎりました。
さらに気になるのが、各ファンドの運用終了予定日の違いです。
第Ⅱ期から第Ⅴ期までの運用終了予定日は、いずれも2026年3月31日。一方、その後に募集された第Ⅵ期だけは運用終了予定日が2027年3月31日と1年間遅れて設定され、募集金額についても大幅に増額されています。
なぜ、第Ⅱ期~第Ⅴ期の運用終了を目前に控えたタイミングで、それまでより募集金額の大きな第Ⅵ期を組成し、その運用期間だけを1年間長く設定する必要があったのでしょうか。
こうした時系列だけを見ると、「第Ⅵ期による新たな資金調達によって、第Ⅱ期~第Ⅴ期の償還に必要な資金を確保しようとしていたのではないか」という可能性も頭をよぎります。
もちろん、これは筆者が公開情報の時系列から抱いた疑問にすぎず、第Ⅵ期の募集資金が実際に第Ⅱ期~第Ⅴ期の償還原資として使用されたことを示すものではありません。
実際の資金使途については、事業者から開示されている情報をもとに判断する必要があります。
ただ、第Ⅵ期の募集金額・運用期間の変更に加え、募集途中で利回りの変更も行われていることを考えると、「なぜこのタイミングで募集条件を変更してまで追加の資金調達を行う必要があったのか」という点については、個人的に強い疑問が残りました。
償還遅延後の対応
一気に4ファンドの償還遅延を報告したわかちあいファンドですが、その事後対応にも批判が殺到しています。
わかちあいファンドは、出資者の方々にメールで遅延を報告したようですが、なんと、「SNSへの転載禁止」という指示があったようです。
この対応に出資者の方も大激怒。事後対応の不誠実さがSNSを扇動するかたちとなりました。
わかちあいファンド。
旧軽井沢大樹の森遅延決定。
遅延連絡メールをSMSに転載禁止。
らしいです。
報告文面に誠意が感じられなく残念です。3月に運用終了しているファンドを4月下旬に遅延報告て、、 https://t.co/3kuf91uyhz
— はるか (@orange_waa) April 28, 2026
わかちあいファンド、問い合わせが殺到している模様
こうなるから、都合の悪い情報は伏せずに先に出したほうが良いんだよね
それにSNSが発達した今の時代、隠そうとしても隠せないし、逆にあることないことネガティブな憶測付きで広まってしまう
情報は聞かれる前に先に出す、それが信頼につながる pic.twitter.com/Y92S2qLbce
— タロウ@ソシャレン・不動産クラファン投資家 (@viviri_man) May 8, 2026
今後のファンドはいかに
「わかちあい東近江ウィング」でも、第2次募集が集まらなかったことで第1次募集分の償還遅延が発生しています。
キャピタル型の場合、本来は売却益から償還するべきですが、「わかちあいファンド旧軽井沢大樹の森」シリーズ、「わかちあい東近江ウィング」は同じようなパターンで償還遅延が発生しています。
そのため、どちらも追加募集を前提とした資金計画をしていたために償還遅延が発生していたのでは、といった見方が広がるのも無理のないことかもしれません。
そのほかにも、5月27日に運用期間延長が報告されたファンドが4つあります。
- わかちあいファンド石垣島第Ⅳ期 1年間延長
(8.0%、24カ月、2億5500万円) - わかちあいファンド石垣島第Ⅴ期 1年間延長
(8.0%、22カ月、2億2500万円) - わかちあいファンド滋賀湖南② 1年間延長
(5.0%、24カ月、2億2500万円) - わかちあいファンド南青山 半年間延長
(8.5%、12カ月、2億5000万円)
これらも運用期間延長ということですが、延長期間が長めです。利益最大化のための延長となるのか、償還されるのか、見どころです。
まとめ
滋賀県を拠点に数年来ファンド運営を行い、堅調な償還実績を誇っていたわかちあいファンド。
開発型を始めてから運営に陰りが現れ、今年に入り償還遅延を複数発生させてしました。
失敗の大きな要因は資金計画の不十分さと、大幅な事業変更にあると思われます。
さらに、「SNSの転載禁止」などの指示で消費者の怒りを買ってしまいました。事後対応の不誠実さにも問題があったと思われます。
運用延長が決定したファンドや、今後組成予定のファンドも注目が集まります。



