
不動産クラウドファンディングは、少額から不動産へ投資できる手軽さや、銀行預金などと比べて高い想定利回りが期待できる点から注目を集めています。
一方で、投資した元本や分配金が保証されているわけではありません。対象不動産の売却や開発が予定どおりに進まなければ、運用期間の延長や償還遅延、元本毀損が発生する可能性があります。
2025年から2026年にかけては、以下の不動産クラウドファンディングサービスで、投資家に大きな影響を与える問題が相次ぎました。
- FUNDI
- ヤマワケエステート
- Victory Fund
- わかちあいファンド
本記事では、それぞれのサービスで何が起きたのかを簡潔に紹介します。詳しい経緯や対象ファンド、現在の運営状況については、各サービスの詳細記事をご覧ください。
※本記事では、償還遅延、運用期間の延長、元本毀損、行政処分、廃業届の提出など、投資家の資金回収や投資判断に影響を与える事象を、便宜上「事故」と表現しています。償還遅延や運用期間延長が発生しても、直ちに元本毀損が確定するわけではありません。
不動産クラウドファンディングの「償還遅延」とは
不動産クラウドファンディングでは、投資家から集めた資金で不動産を取得・運用し、賃料収入や売却代金を原資として元本と分配金を支払います。
しかし、対象不動産の売却や決済、開発工事などが予定どおりに進まなければ、当初の予定日に資金を返還できない場合があります。
主な事象の違いは、以下のとおりです。
運用期間の延長
運用期間の延長とは、当初設定されていた運用終了日を変更し、不動産の保有や開発、売却活動などを継続することです。
不動産クラウドファンディングでは、運用期間を延長できる条件や投資家への通知方法・通知時期が、あらかじめ契約書面や約款に定められている場合があります。
たとえば「運用終了日の一定期間前までに投資家へ通知する」といった規定がある場合、事業者はその契約内容に従って延長手続きを行うことになります。
つまり、契約に基づいて事前に通知され、定められた手続きの範囲内で運用終了日を変更するのが「運用期間の延長」です。
なお、運用期間が延びたからといって、予定利回りが延長期間分だけ自動的に加算されるとは限りません。延長期間中の分配金については、各ファンドの契約内容や最終的な運用結果によって異なります。
償還遅延・償還延期
償還遅延・償還延期とは、契約書面などで定められていた償還予定日を迎えても、投資家へ元本を返還できない状態です。
運用期間の延長とは異なり、当初定められた期限までに必要な変更手続きが行われないまま償還予定日を迎えたり、償還直前になって予定どおり返還できないことが通知されたりするケースもあります。
重要なのは、「運用期間の延長」と「償還遅延」は同じではないという点です。
契約書面に運用期間を延長するための条件や通知期限が定められているにもかかわらず、その手続きを行わずに償還期限を超過した場合には、契約上の問題となる可能性があります。また、不動産特定共同事業法上求められる投資家への適切な説明や情報提供との関係でも問題となる可能性があります。
そのため、「後から運用期間を延長したと説明された」というだけで、通常の運用期間延長と同じものとして扱うことはできません。契約書面でどのような延長手続きが定められていたのか、事業者がその手続きを守っていたのかを確認することが重要です。
なお、償還が遅れた段階で元本毀損が確定するわけではありません。対象不動産の売却などによって資金を確保できれば、その後に元本が返還される可能性もあります。
元本毀損
元本毀損とは、投資した元本の一部または全部が返還されないことです。
運用期間の延長や償還遅延が発生しただけでは、元本毀損が確定したことにはなりません。
たとえば、不動産の売却が予定より遅れたものの、最終的に十分な価格で売却できれば、遅れて元本が全額償還される場合もあります。
一方、対象不動産の売却価格が想定を大きく下回った場合や、債権を回収できなかった場合などには、投資家へ返還される金額が出資元本を下回り、実際に元本毀損が発生することがあります。
このように、「運用期間の延長」「償還遅延」「元本毀損」は、それぞれ状況の深刻度や契約上の意味が異なります。
特に償還遅延が発生した場合は、単に「返還が遅れている」という事実だけでなく、契約上認められた延長手続きが取られていたのか、いつ投資家へ通知されたのか、その後の償還原資がどのように確保される予定なのかまで確認することが重要です。
今期に事故が発生した不動産クラウドファンディング一覧
| サービス | 主な問題 | 投資家が確認すべきポイント |
| FUNDI | 複数ファンドの償還遅延、代表者・社名の変更 | 遅延案件の売却状況、実際の償還結果、現在の経営体制 |
| ヤマワケエステート | 運用期間延長、償還延期、元本毀損、行政処分 | 長期化案件の回収状況、分別管理の改善、会計調査の結果 |
| Victory Fund | 複数ファンドの償還遅延、廃業届の提出 | 償還原資の確保、売却済み物件の資金管理、具体的な償還計画 |
| わかちあいファンド | 複数ファンドの償還遅延、運用期間延長 | 開発案件の完成・売却状況、追加募集に依存した資金計画の有無 |
この4つのサービスで何が起こっているのか、それぞれ詳しく確認していきます。
FUNDI

★データセンター・蓄電池関連の高利回り案件が中心
★サービス開始直後から大型案件を募集
★複数ファンドで償還遅延が発生している
FUNDIは、データセンター関連不動産を中心に展開する不動産クラウドファンディングサービスです。
第1号案件から大型募集を行い、高い予定利回りで注目を集めました。
一方で、データセンター関連案件や蓄電池関連案件で償還遅延が発生しており、現在は遅延案件の償還状況や売却進捗、運営体制が重要な確認ポイントとなっています。
| 運営元情報 | |
|---|---|
| 運営企業 | 株式会社FUNDI |
| 本社 | 千葉県船橋市本郷町475-1ISII BLDG. 505 |
| 代表取締役 | 佐藤悠大 |
| 会社設立 | 2018年9月 |
| 資本金 | 1億円 |
| 免許等 | 宅地建物取引業:神奈川県知事(1)第32765号 不動産特定共同事業許可:神奈川県知事第24号 少額短期保険代理店登録 |
主な投資対象 :データセンター用地、蓄電池関連不動産など
主な特徴 :年10~12%前後の高利回り案件を展開
現在の注目点 :遅延案件の償還結果、対象不動産の売却状況、運営体制
事故の概要 :プロジェクト#1・#3・#5・#6などで償還遅延
複数案件の遅延状況や代表交代、社名変更、投資家の反応については、以下の記事で詳しく解説しています。
不動産クラウドファンディング『FUNDI』は、想定利回り10~12%前後のデータセンター開発案件を中心に、サービス開始直後から大きな注目を集めました。一方、その後は複数案件で当初の償還予定日を超過しています。代表取締役と社名[…]
ヤマワケエステート

★平均想定利回り14%超の高利回りファンドで急成長
★運用期間延長・償還延期に加え、元本毀損案件も発生
★行政処分により資金管理体制の問題が明らかになった
ヤマワケエステートは、高い想定利回りを打ち出したファンドを多数組成し、短期間で規模を拡大した不動産クラウドファンディングサービスです。
サービス開始当初は順調な償還実績でも注目を集めました。
その一方で、複数案件の運用期間延長や償還延期、元本毀損、さらに大阪府による行政処分も発生しています。現在は新規募集を再開していますが、延長・延期案件の回収状況や再発防止策の実効性が重要な確認ポイントです。
高利回りに加えて多くの償還実績がある一方、償還延期や元本毀損も発生しています。過去の実績だけで判断せず、現在運用中の案件や資産管理体制にも注目しましょう。
| 運営元情報 | |
|---|---|
| 運営企業 | ヤマワケエステート株式会社 |
| 本社 | 大阪府大阪市中央区安土町2-2-15 ハウザー堺筋本町駅前ビル7F |
| 代表取締役 | 梅本拓磨 |
| 会社設立 | 2018年5月2日 |
| 資本金 | 1億円 |
| 免許等 | 不動産特定共同事業 大阪府知事 第19号 不動産特定共同事業の種別 第1号事業・第2号事業(電子取引業務を行う) 宅地建物取引業免許 大阪府知事(2)62854号 |
主な投資対象 :レジデンス、ホテル、宅地、開発案件、海外案件など
主な特徴 :高利回りファンドを多数展開
現在の注目点 :延長・延期案件の回収状況、分別管理の改善、再発防止策
事故の概要 :複数ファンドで運用期間延長・償還延期、元本毀損案件あり、2026年2月に行政処分
行政処分の詳しい内容や元本毀損案件、韓国アクアステーションの現状については、以下の記事で詳しく解説しています。
不動産クラウドファンディング「ヤマワケエステート」は、年10%を超える高い想定利回りのファンドを相次いで募集し、サービス開始から短期間で急成長しました。当初は予定どおりの償還だけでなく、想定を上回る利回りとなったファンドもあ[…]
Victory Fund

★高利回り案件を多く扱ってきた不動産クラウドファンディング
★複数ファンドで償還遅延が発生
★2026年7月に不動産特定共同事業の廃業届を提出
Victory Fundは、ホテルやレジデンス、開発型案件などを対象に、高い予定利回りのファンドを展開してきた不動産クラウドファンディングサービスです。2021年3月にサービスを開始し、当初は償還実績を積み重ねていました。
しかし、2026年に入ってから複数ファンドで償還遅延が発生しました。さらに2026年7月には、運営会社のカチデベロップメント株式会社が不動産特定共同事業の廃業届を東京都へ提出し、新規ファンドの募集を終了しています。
廃業届の提出後も、既存ファンドについては償還などの対応が残るため、投資家にとっては遅延中のファンドで出資金がいつ、どの程度返還されるのかが最大の注目点です。
| 運営元情報 | |
|---|---|
| 運営企業 | カチデベロップメント株式会社 |
| 本社 | 東京都中央区日本橋本町2-3-15 共同ビル7階 |
| 代表取締役 | 豊嶋克廣 |
| 会社設立 | 1997年7月7日 |
| 資本金 | 1億3,425万円 |
| 免許等 | 宅地建物取引業東京都知事(5)第79547号 |
主な投資対象 :マンション、ホテル、商業施設、開発案件など
主な特徴 :年10%超の高利回り案件を多く展開
現在の注目点 :廃業届提出後の動き、既存ファンドの償還時期、売却代金の管理
事故の概要 :第32号~第35号を中心に償還遅延が発生
償還が遅れているファンドや売却済み物件をめぐる疑問、廃業届提出までの経緯については、以下の記事をご覧ください。
皆さんは、「Victory Fund(以下ビクトリーファンド)」という不動産クラウドファンディングサービスをご存じですか。同サービスは2021年3月にサービスを開始し、高利回り案件を多く取り扱っていました。しかしながら、この頃、[…]
わかちあいファンド

★2019年開始、インカム型を中心に実績を積み重ねてきた
★旧軽井沢大樹の森シリーズなどで償還遅延が発生
★東近江ウイングや一部ファンドで運用期間延長も発生
わかちあいファンドは、株式会社日本プロパティシステムズが運営する不動産クラウドファンディングサービスです。
もともとは賃料収入を中心とするインカム型ファンドで堅実な運営実績を積み重ねてきました。
一方、2026年に入ってからは、旧軽井沢大樹の森シリーズや東近江ウイングで償還遅延が発生し、石垣島や南青山など一部ファンドでは運用期間延長も発表されています。
現在は、工事の進捗や対象不動産の売却、実際の償還状況が注目点です。
| 運営元情報 | |
|---|---|
| 運営企業 | 株式会社日本プロパティシステムズ |
| 本社 | 滋賀県大津市島の関1-10 |
| 代表取締役 | 森田康弘 |
| 会社設立 | 2000年9月 |
| 資本金 | 1億円 |
| 免許等 | 不動産特定共同事業 許可 滋賀県知事 第1号 宅地建物取引業 許可 国土交通大臣(3)第8486号 第二種金融商品取引業登録 近畿財務局長(金商)第346号 滋賀県知事許可 (般-5)第13659号 一般建設業の建築工事業 |
主な投資対象 :賃貸マンション、収益不動産、開発型案件など
主な特徴 :インカム型中心から開発型にも展開
現在の注目点 :工事進捗、売却状況、実際の元本償還
事故の概要 :旧軽井沢大樹の森第Ⅱ期~第Ⅴ期、東近江ウイングⅠで償還遅延、石垣島・滋賀湖南②・南青山で運用期間延長
旧軽井沢大樹の森シリーズの募集経緯や東近江ウイング、運用期間が延長されたファンドについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
賃貸マンションを主軸にインカム型を主とした手堅いファンド運営を行っていたわかちあいファンド。2019年からクラウドファンディング事業を開始し、拠点である滋賀県を中心に評価を集めていました。しかしながら、今年の4月29 日、同社の[…]
サービスの事例から分かる共通点
今回紹介した4サービスでは、問題の内容や深刻度、現在の状況がそれぞれ異なります。
一方で、不動産クラウドファンディングへ投資する際に確認すべき、いくつかの共通点も見えてきます。
高利回りには相応のリスクがある
FUNDIやヤマワケエステート、Victory Fundでは、年10%を超える高利回りのファンドが多数募集されていました。
高い想定利回りは魅力ですが、それを実現するためには、不動産を取得価格より高く売却したり、開発事業を予定どおり完成させたりする必要があります。
高い想定利回りが設定されているファンドほど、開発や売却、資金調達が計画どおりに進まない場合の影響も大きくなる傾向があります。そのため、利回りの高さだけでなく、どのようなリスクを前提にその収益を目指しているのかを確認することが重要です。
償還原資を確認する
投資前には、元本を何によって償還する計画なのかを確認する必要があります。
完成済み不動産の賃料収入なのか、不動産の売却代金なのか、後続の資金調達を含む事業収入なのかによって、リスクは大きく異なります。
特に、追加募集や後続フェーズが成立しなければ事業全体が進まない案件では、先に投資したファンドも資金調達リスクの影響を受ける可能性があります。
売買契約の締結と代金入金は別
不動産の買主が決まった、売買契約を締結したという説明があっても、売却代金の決済が完了するまでは償還原資が確保されたとは限りません。
買主の資金調達や契約上の条件によっては、決済が延期されたり、売買契約が解除されたりする可能性があります。
ファンドごとの資金管理も重要
投資家は、対象不動産の価値だけでなく、運営会社がファンドごとの資金を適切に管理しているかも確認する必要があります。
ヤマワケエステートの行政処分では、特定ファンドの資金が別ファンドの支払いへ使われていたことが公的資料で確認されました。
対象物件を詳しく分析しても、資金が別の目的に使用されれば、投資判断の前提が崩れてしまいます。
情報開示の姿勢を見る
問題が起きた後に、どの程度早く、具体的な説明が行われるかも重要です。
遅延の理由だけでなく、対象不動産の現在の状況、売却交渉の進捗、償還原資、今後の報告時期などが説明されているかを確認しましょう。
代表者による動画やメールでの説明が多いことと、客観的な情報開示が十分であることは同じではありません。登記、契約、決済、財務状況など、第三者が確認できる情報が示されているかが重要です。
償還遅延が起きたときに確認すること
投資しているファンドで償還遅延や運用期間の延長が発生した場合は、まず運営会社から届いたメールやファンドレポートを保存しましょう。
そのうえで、以下の項目を確認します。
- 遅延や延長が発生した具体的な原因
- 対象不動産の現在の所有者と登記状況
- 売買契約が締結されているか
- 売却代金の決済予定日
- 工事や許認可の進捗
- 延長期間中の分配金の扱い
- 元本毀損が発生する可能性
- 次回の進捗報告日
- 会社の財務状況や経営体制の変更
- 行政機関による処分や指導の有無
SNSや個人ブログは、運営会社からのメールや投資家の実体験を知る手がかりになります。
一方、個人の推測や未確認情報も含まれるため、会社の公式発表、行政機関の資料、法人登記、不動産登記などと分けて判断することが大切です。
まとめ
2025年から2026年にかけて、FUNDI、ヤマワケエステート、Victory Fund、わかちあいファンドでは、償還遅延や運用期間の延長など、投資家の資金回収に影響する問題が発生しました。
償還遅延が発生しても、最終的に元本と分配金が支払われるケースはあります。しかし、資金が予定どおりに戻らないこと自体が、不動産クラウドファンディングの重要なリスクです。
投資先を選ぶ際は、想定利回りや過去の累計償還額だけで判断してはいけません。
対象不動産の出口戦略、開発計画、劣後出資割合、ファンドごとの資金管理、運営会社の財務状況、情報開示の姿勢まで確認し、サービスや案件を分散することが重要です。
各サービスで発生した問題の詳しい経緯については、以下の個別記事をご覧ください。
- FUNDI:詳細記事はこちら
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- ヤマワケエステート:詳細記事はこちら
不動産クラウドファンディング「ヤマワケエステート」は、年10%を超える高い想定利回りのファンドを相次いで募集し、サービス開始から短期間で急成長しました。当初は予定どおりの償還だけでなく、想定を上回る利回りとなったファンドもあ[…]
- Victory Fund:詳細記事はこちら
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- わかちあいファンド:詳細記事はこちら
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