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現場から読み解く「不動産金融の世界」 ~第5回 不動産クラウドファンディングを始めるために

本記事は、「現場から読み解く”不動産金融の世界”」シリーズの一環として、不動産クラウドファンディングや貸付型クラウドファンディング、セキュリティトークン(ST)を取り巻く市場の課題について考察するものです。

業界に長年携わってきたグローシップ・パートナーズ株式会社 代表取締役 松井晴彦氏が、総合コンサルタントとしての実務経験をもとに、事業運営の現場における具体的な論点から、業界全体の変遷や今後のあるべき姿までを幅広く解説します。

著者プロフィール

著者情報
氏名松井晴彦
所属グローシップ・パートナーズ株式会社
役職代表取締役
経歴貸付型クラウドファンディング、不動産クラウドファンディング、デジタル証券(セキュリティトークン)などのオンライン金融ビジネス領域において、10年以上にわたりコンサルティングおよびプラットフォーム提供を行う。ビジネス・法務の両面に精通し、事業者支援と業界発展の双方に携わってきた経験をもとに、客観的な視点から金融市場の健全な成長について提言を行っている。

不動産クラファン参入に必要な許可と事業区分

不動産クラウドファンディングを始めるには、不動産特定共同事業法に基づく許可が必要となる。
「不動産クラウドファンディング」は法律上の正式名称ではなく、法的には、不動産特定共同事業のうち、インターネットを通じて投資家から契約の申込みを受け付ける「電子取引業務」に位置づけられる。
このため、不動産特定共同事業の許可要件に加え、電子取引業務を適確に行うための体制整備も必要となる。

不動産特定共同事業は第一号事業から第四号事業までに分かれ、一般的な不動産クラウドファンディングの多くは、事業者自身が投資家と契約し、不動産を保有・運用する第一号事業に該当する。
第二号事業は他の事業者が組成したファンドの契約締結を代理・媒介する事業であり、第三号・第四号事業はSPCを利用する「特例事業」に関係する。
第三号事業者が不動産の取得・運用などを担い、第四号事業者が投資家への募集を行う仕組みで、SPCが不動産を保有することで事業者本体から倒産隔離できる点が特徴である。
なお、第四号事業には第二種金融商品取引業の登録も必要となる。

許可取得に求められる財務・人的要件

許可を取得するためには、財務面や人的体制など複数の要件を満たす必要がある。
最低資本金は、第一号事業が1億円、第二号事業が1,000万円、第三号事業が5,000万円、第四号事業が1,000万円であり、純資産額が資本金または出資額の90%以上であることも求められる。
ただし、資本金を用意すれば許可を取得できるわけではない。

法人であり、宅地建物取引業の免許を受けていることに加え、事業を継続できる「財産的基礎」が必要となる。
実務上は、直前3事業年度の決算書や今後おおむね3事業年度の収支見込みが審査され、現在の財務内容と将来の事業継続性の両面が確認される。
また、事務所ごとに業務管理者を配置する必要があり、宅地建物取引士であることに加え、不動産特定共同事業について3年以上の実務経験を有すること、または不動産証券化協会認定マスターなど所定の要件を満たすことが求められる。

事業を支える内部管理体制と分別管理

許可審査では、財務面だけでなく、事業を公正かつ適確に遂行するための内部管理体制も重要となる。
実務上は、ファンドの組成・販売・運用を行う事業部門から、リスク管理・コンプライアンス部門を独立させ、その責任者に相応の知識と経験を持つ人材を配置することが求められる。
また、投資委員会やリスク・コンプライアンス委員会を設置し、不動産の取得、利益相反、法令遵守、投資家保護などを審議する体制も必要である。
必要に応じて、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士などの外部有識者を加え、事業部門だけで判断が完結しない仕組みを整えることも重要となる。

さらに、事業部門を第1線、リスク管理・コンプライアンス部門を第2線、独立した内部監査部門を第3線とする「3線管理」により、相互に牽制が働く体制を構築する必要がある。
加えて、投資家から集めた資金やファンドの財産については、事業者の固有財産や他のファンドの財産と明確に区分し、ファンドごとの会計帳簿や専用口座、金銭信託などを用いた分別管理を行わなければならない。

電子取引を支えるシステム整備

電子取引業務を行うためには、システム面の整備も欠かせない。
情報漏えいや不正アクセスを防ぐセキュリティ対策、システム監視、障害対応、バックアップなどの体制に加え、実務上は小口化によって大量に発生する業務をどこまで自動化できるかが重要となる。
会員登録、本人確認、契約書面の交付、申込み、入金照合、分配、源泉徴収、償還などを人手で処理すれば、事業規模の拡大とともにコストとミスが増えていく。

そのため、銀行データとの連携、JPKIなどを利用した本人確認、マイナンバーの安全な収集・保管、分配金や源泉税の計算などをシステム化し、募集上限の超過や二重処理を防ぐアプリケーション統制を組み込む必要がある。
不動産クラウドファンディングのシステムは、単なる募集サイトではなく、多数の投資家との取引を正確かつ安全に処理するための業務基盤なのである。

参入後に問われる事業規模と採算性

そして、不動産クラウドファンディングは、許可を取得すれば終わりという事業ではない。
事業開始後も、コンプライアンス、リスク管理、内部監査、経理・税務などの人員を配置し、システム監視、セキュリティ対策、法令改正への対応を継続していく必要がある。
これらの体制やシステムには固定費としての性格が強く、ファンドの募集額が小さくても必要な機能や人員は大きく変わらない。
そのため、少額のファンドを時々募集するだけでは採算を確保しにくい。

参入を検討する際には、許可を取得できるかどうかだけでなく、必要な体制とシステム投資を維持しながら、固定費を吸収できる事業規模まで成長させられるかという視点が重要になる。

編集部コメント

不動産クラウドファンディングへの参入には、許可取得だけでなく、財務基盤や専門人材、内部管理体制、システム整備など、多岐にわたる準備が求められます。

さらに、事業開始後もコンプライアンスやシステム運用、セキュリティ対策などの継続的なコストが発生するため、単にファンドを組成できる体制を整えるだけでは十分とはいえません。
必要な固定費を吸収しながら、安定的に事業を継続できる規模まで成長させられるかが重要になるでしょう。

当メディアとしても、不動産クラウドファンディング市場の健全な発展に向け、参入時に求められる体制や実務、事業運営上のポイントについて、今後も継続的に発信してまいります。

※「住宅新報9月29日号」 より、当社にて一部原稿を加筆修正し掲載

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