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現場から読み解く「不動産金融の世界」 ~第4回 不動産クラファンは本当に儲かるのか 一案件の利益より、AUMの積み上げを~


本記事は、「現場から読み解く”不動産金融の世界”」シリーズの一環として、不動産クラウドファンディングや貸付型クラウドファンディング、セキュリティトークン(ST)を取り巻く市場の課題について考察するものです。

業界に長年携わってきたグローシップ・パートナーズ株式会社 代表取締役 松井晴彦氏が、総合コンサルタントとしての実務経験をもとに、事業運営の現場における具体的な論点から、業界全体の変遷や今後のあるべき姿までを幅広く解説します。

著者プロフィール

著者情報
氏名松井晴彦
所属グローシップ・パートナーズ株式会社
役職代表取締役
経歴貸付型クラウドファンディング、不動産クラウドファンディング、デジタル証券(セキュリティトークン)などのオンライン金融ビジネス領域において、10年以上にわたりコンサルティングおよびプラットフォーム提供を行う。ビジネス・法務の両面に精通し、事業者支援と業界発展の双方に携わってきた経験をもとに、客観的な視点から金融市場の健全な成長について提言を行っている。

不動産クラファンの収益構造

不動産クラウドファンディング事業は儲かるのか。
今回は、投資家ではなく、ファンドを組成・運用する事業者の側から考えてみたい。
不動産ファンドを運用するAM会社には、複数の収益機会がある。ファンド組成時のアレンジメントフィー、物件取得時のアクイジションフィー、保有期間中のAMフィー、売却時のディスポジションフィーなどである。運用成果が一定の基準を上回れば、インセンティブフィーを受け取る場合もある。

さらに、PM事業を営んでいればPMフィー、入居者募集を行えばリーシングフィー、リノベーション会社を持っていれば改修工事の収入、売買仲介を行えば取得時や売却時の仲介手数料も得られる。
ファンド側から見れば費用だが、AM会社やそのグループ会社にとっては、それぞれが収益機会となる。

収益拡大のカギはAUMの積み上げ

ただし、これらの収益の多くは運用資産額に連動する。
ファンドサイズが小さければ収入も小さい一方、物件調査、契約、会計、投資家管理、システム運営には一定のコストがかかる。
AM会社が安定的に利益を上げるためには、一件当たりのファンドサイズを大きくし、AUM(運用資産残高)を積み上げる必要がある。

特例事業としてSPC(特別目的会社)を利用する場合には、金融機関などからの借入れも活用できる。
例えばLTV(Loan to Value)が50%であれば、物件価格の半分を借入れで賄えるため、募集した出資額の約2倍の物件を取得できる。
また、対象不動産変更型の仕組みを活用し、一定の条件のもとで対象不動産を入れ替えながら長期的に運用することで、一案件ごとに募集と償還を繰り返す事業から、継続的に資産を運用する事業へ発展させることもできる。

大型ファンドに必要なのは「会員数」より「投資額」

ファンドを大型化するうえでは、単に会員数を増やし続ければよいわけではない。
例えば10億円を募集する場合、平均投資額が10万円なら1万人の投資家が必要だが、100万円なら1,000人、500万円なら200人で済む。
つまり、大型ファンドに耐えられる優良な投資家市場へアクセスし、一人当たりの投資額を引き上げることが重要になる。

ファンドが大型化すれば、AMフィーだけでなく、PM、リノベーション、仲介など周辺事業の収益も拡大する。
会員数そのものを競うのではなく、継続的に投資してくれる投資家との関係を築くことが、AUMを安定して積み上げるうえで重要なのである。

一案件の利益より、継続的なAUM拡大を

不動産クラファンは、きちんと取り組めば安定した収益を生み出せる事業である。
良質なファンドを継続的に組成し、それが投資家によって消化されれば、AUMが積み上がり、AMフィーと周辺事業の収益も安定する。

一つの案件で大きな利益を狙うのではなく、長期的に投資家との関係を築き、事業全体を大きくしていくことが重要である。
事業者にとって本当に重要なのは、一案件の利益率ではなく、良質な資産を継続的に運用し、その残高をどこまで積み上げられるかという視点ではないだろうか。

地上げ・権利調整型ファンドは持続的成長につながるか

その意味で、地上げ・権利調整型ファンドへの依存には疑問がある。
権利調整に成功した一案件だけを見れば、大きな売却益を得られるかもしれない。
しかし、交渉がまとまらなければ売却できず、償還遅延や元本毀損を招く。高い事業リスクを許容する個人投資家の市場は小さく、ファンドの大型化にも向かない。

一案件では儲かっても、継続的なクラファン事業として儲かるとは限らない。
短期の売買益を追うのではなく、良質なファンドを継続的に提供し、大きな投資家市場との関係を築きながらAUMを積み上げる。
それこそが、不動産クラファン事業を安定的に成長させる道ではないだろうか。

編集部コメント

不動産クラウドファンディング市場が拡大するなか、事業者にとっては、単発の案件で大きな利益を上げること以上に、良質なファンドを継続的に提供し、投資家との信頼関係を築きながらAUMを積み上げていくことが重要になっています。

ファンドの大型化や長期運用、投資家層の拡大など、事業を安定的に成長させるための選択肢は今後さらに広がっていくと考えられます。一方で、過度に高いリターンや短期的な売却益を追求する事業モデルについては、その持続可能性やリスクを慎重に見ていく必要があります。

当メディアとしても、不動産クラウドファンディング市場の健全な発展に向け、事業者のビジネスモデルやファンド運営のあり方、投資家との関係構築について、今後も継続的に発信してまいります。

※「住宅新報 8月25日号」 より、当社にて一部原稿を加筆修正し掲載

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