不動産クラウドファンディングに取り組むうえで考慮すべきリスクの1つが元本割れです。
2025年6月現在不動産クラウドファンディングにおいて元本割れが発生した事例はありませんが、一定のリスクがあることは理解しておくべきでしょう。
そのためには仕組みと対策を多角的に分析する必要があります。
本記事では、投資家が直面する可能性のあるリスク要因と具体的な回避策を、法制度や金融構造の観点から解説します。
不動産クラウドファンディングの元本割れとは
不動産クラウドファンディングの元本割れとは、ファンドの運用期間終了後に支払われる償還金と運用期間中の分配金の合計が投資した元本(出資金)を下回る状態を指します。
元本割れは不動産の売却価格が想定より低くなった場合や賃料収入が減少した場合、さらには世界的な金融危機や自然災害、運営事業者の経営不振などによって不動産価値や収益が大きく損なわれた際に発生しやすいとされています。
投資家は「元本保証がない金融商品」であることを理解し、常にリスクを念頭に置いて投資判断を下す必要があります。
インカムゲインとキャピタルゲインの関係性
収益の種類 | 内容 |
---|---|
インカムゲイン | 賃料収入。管理費・修繕費などを差し引いた純利益が分配原資 |
キャピタルゲイン | 物件売却益。購入価格・費用との差額が利益 |
不動産クラウドファンディングの収益構造は、入居者から得られる賃料収入(インカムゲイン)と、物件売却時に購入価格との差額として得られる売却益(キャピタルゲイン)の2本柱で成り立っています。
インカムゲインは管理費や修繕費などの経費を差し引いた実質的な賃料収入が分配原資となる一方、キャピタルゲインは物件の売却価格から購入時の価格や諸費用を差し引いた利益が分配される仕組みとなっています。
そのため空室率の上昇や賃料の下落があればインカムゲインが減少し、不動産市場の変動によって売却価格が購入価格を下回ればキャピタルゲインがマイナスとなるなど、それぞれの要素が最終的な投資リターンに大きく影響します。
法制度上の保証限界(なぜ元本保証ができないのか?)
不動産クラウドファンディングは「不動産特定共同事業法」や「金融商品取引法」に基づき運営されており、元本保証は禁止されています。
不動産特定共同事業法で定められた優先劣後構造によって一般投資家の優先出資部分は事業者の劣後出資がクッションとなり一定の損失までは保護されますが、劣後出資額を超える損失が発生した場合には優先出資者も元本割れのリスクを負うため、法制度上どのような仕組みを採用しても完全な元本保証は実現できないのが現状です。
元本割れを引き起こす2大要因
冒頭でも記載した通り、不動産クラファンにおいて2025年6月現在元本割れは発生していません。
ただし、不動産ファンド全般で見ると次のような事例があります。不動産クラウドファンディングでも同様のリスクを秘めていることは理解しましょう。
リスク要因 | 具体的事例 | 影響度 |
---|---|---|
不動産価格急落 | リーマンショック級の金融危機 | 高 |
運営事業者倒産 | 経営不振による資金繰り破綻 | 中 |
不動産価格急落(市場変動)
実際に2008年に発生したリーマンショック級の金融危機では、アメリカの大手金融機関が相次いで破綻し、その影響が日本の不動産市場にも波及、地価は2009年以降マイナス圏に沈みました。
特に商業地では2年で約20%以上の大幅な下落を記録するなど、機関投資家向け不動産ファンドでは売却価格が大きく目減りし、機関投資家の元本が大きく毀損した事例が多数発生しました。
このような市場変動により、不動産クラファンにおいても、売却時に想定したキャピタルゲインが得られず、元本割れに至るリスクがあります。
運営事業者倒産
実際に2008年のリーマンショック後には、JーREITを扱うニューシティ・レジデンス投資法人や機関投資家向けの大口投資商品を扱うジョイント・コーポレーションなど複数の不動産ファンド運営会社が相次いで経営破綻しました。
その結果、資金繰りの悪化や債務超過によってファンド資産が凍結され、投資家への元本返還が大幅に遅延・減額されるなど、運営事業者の倒産が元本割れリスクを現実化させた事例が多数発生しました。
不動産クラウドファンディングにおいても、このような運営事業者が倒産した場合、元本割れに至るリスクがあることは理解しておきましょう。
リスク軽減のための実践手法
不動産クラウドファンディングには一定のリスクが伴いますが、仕組みを正しく理解し、戦略的に投資先を選ぶことで、リスクを抑えることも可能です。
ここでは、元本割れリスクの軽減につながる代表的な実践方法として、「優先劣後システム」の活用や「分散投資の工夫」について紹介します。
優先劣後システムの効果的活用
不動産クラウドファンディングの多くでは、ファンド出資を「優先出資(主に投資家が担当)」と「劣後出資(主に事業者が担当)」に分ける「優先劣後システム」が採用されています。
このシステムでは、万一運用期間中に不動産の価値が下落した場合、まず劣後出資分から損失を吸収するため、投資家の元本への影響を一定程度まで抑えられる可能性があります。
たとえば、1億円のファンドに対して、事業者が3,000万円を劣後出資しているとしましょう。
つまり劣後出資比率が30%のファンドであるため、仮に不動産価値が25%下落しても、投資家の優先出資部分は全額保全される設計となっています。
もちろん、これは理論的な目安であり、リスクが完全になくなるわけではありませんが、出資構造の把握はリスク選好に応じたファンド選びの一助になるでしょう。
なおファンドを選ぶ際には、劣後出資比率だけでなく、事業者の信頼性や運用実績などもあわせて確認することが大切です。
分散投資戦略の具体例
分散軸 | 推奨バランス例 |
---|---|
地域 | 首都圏60%、地方40% |
種別 | 住宅50%、商業30%、ホテル20% |
事業者 | 3〜5社に分配 |
1.劣後出資比率10%未満の案件
2.運営実績3年未満の新興事業者
3.物件所在地の詳細開示が不十分
4.想定利回りが市場平均より2%以上高い
投資家が抱える素朴な疑問
不動産クラウドファンディングにおける元本割れについて、投資家の皆様からよくいただく質問3つにお答えしました。
ぜひ参考にしてみてください。
- 完全な元本保証商品は存在しますか?
→現行法規制上、元本保証型商品の提供は禁止されています。預金保険制度の対象外である点も要注意です。 - J-REITとのリスク比較は?
→上場リートは上場市場で取引可能なため流動性が高い一方で、価格変動が大きいです。非上場のクラファンは値動きが小さいが、解約が困難です。 - 適正な劣後出資比率は?
→住宅物件では20-30%、商業施設では30-40%が業界標準です。50%超の案件など、極端に高い比率は逆に事業者側のリスクを意味します。
まとめーリスク管理と投資判断の心得ー
不動産クラウドファンディングは、元本割れリスクを伴うミドルリスク・ミドルリターン型の投資商品です。
リスク管理において最終防衛線が重要とされるのは、組織や個人が直面する多様なリスクに対し、多層的な管理体制を構築することで、
万が一他の防衛線(初期のリスク管理やモニタリング)が機能しなかった場合でも、重大な損失や不祥事の発生を最小限に抑える「最後の砦」として機能するからです。
特に金融危機など予測困難な事態や、内部統制の不備、想定外の外部要因が重なった場合、最終防衛線がしっかりしていれば、リスクの早期発見・是正や損失の拡大防止が可能となり、組織や投資家の安定性・信頼性を守る役割を果たします。
このように、最終防衛線はリスク管理体制全体の信頼性を支える基盤であり、責任の所在やプロセスを明確にし、万全の備えを整えるために不可欠な存在です。
慎重な比較・事業者調査の重要性
投資判断の最終段階では、国土交通省の公示地価トレンド分析と運営事業者の財務諸表精査が不可欠です。
過去5年間の物件処分実績では、首都圏住宅の平均処分期間が6ヶ月に対し、地方商業施設では14ヶ月かかる事例もありました。
適切なリスク管理を行えば、不動産クラウドファンディングは平均利回り5-8%の有望な投資手段となり得ます。
ただし、常に最新の市場動向を把握し、投資ポートフォリオを半年に1度は見直すことが成功の秘訣です。
最終的には自己責任の原則
不動産クラウドファンディングは、元本保証がない投資商品であり、価格変動や事業者リスクなど複数の要因によって元本割れが起こる可能性があります。
そのため、優先劣後スキームや分散投資、LTV比率の確認などリスク軽減策を十分に理解し、最低3社の比較検討するなど、案件ごとの情報開示や運営事業者の信頼性も慎重に見極めることが重要です。
リスクを正しく把握し、自分自身で投資判断を行うことが、安定したリターンを得るための第一歩となります。
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