クラウドファンディングとは、crowd(群衆)とfunding(資金調達)を組み合わせた造語であり、不特定多数の人々から少額ずつインターネットを介して資金を調達する方法です。
金融とテクノロジーの融合であるFintechサービスの1つであるクラウドファンディングですが、これまでの投資手法とはどのような点が異なるのでしょうか。
この記事ではクラウドファンディングの種類と特徴、メリット・デメリットを解説します。
クラウドファンディングとは何か

クラウドファンディングには様々な種類がありますが、基本的には投資したい人とお金を調達したい人をインターネット上でマッチングする仕組みをクラウドファンディングと呼びます。
クラウドファンディングはcrowd(群衆)とfunding(資金調達)を組み合わせた造語であり、借り手は不特定多数の人々から資金を調達することができます。
従来の金融機関やベンチャーキャピタルなどを介した資金調達は、借り手が資金を調達するまでに時間が大幅にかかってしまう上に、最悪の場合、審査に落ち融資を受けられない可能性もあります。
しかし、金融とテクノロジーの融合であるFintechサービスが登場する中で、クラウドファンディングも注目を集め始めました。
素早い資金調達が実現可能であるため、クラウドファンディングはコロナウイルスが蔓延している昨今において注目を集めています。
また、一般に認知されているクラウドファンディングと言えば、支援の見返りにモノやサービスを提供する「購入型クラウドファンディング」ですが、実は市場規模の9割を、金銭的リターンを得られる「投資型クラウドファンディング」が占めています。
クラウドファンディングには大きく2種類ある

クラウドファンディングは、法律やリターンの性質の違いから投資型クラウドファンディングと非投資型クラウドファンディングの2種類に大きく分類でき、それぞれが更に細かく分類されます。
この記事では主に、投資型クラウドファンディングについて詳しく述べていきます。
●投資型クラウドファンディング
・不動産クラウドファンディング
・株式投資型クラウドファンディング
●非投資型クラウドファンディング
・購入型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディングは、事業やプロジェクトを企図している借り手が匿名組合に基づき、インターネット上で不特定多数の投資家から募ったお金を運用し、リターンとして償還金(元本)と分配金(利回り)を合わせた額を投資家に分配するクラウドファンディングで、ソーシャルレンディングとも呼ばれています。

融資型クラウドファンディングは、一口一万円からと少額投資が可能で、柔軟に投資の計画ができることが特徴です。また、他の金融商品と比べても利回りが5~10%と高く、投資対象として非常に魅力的となっています。
不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングとは、従来の不動産投資と異なり、インターネットを介してある物件を不特定多数の人々からのお金で不動産を購入し運用するクラウドファンディングです。
通常の不動産投資と同様、投資家はリターンとして賃料収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)を得ることができます。
不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法に基づいて1つの不動産ファンドを小口化し、複数の投資家で運用していくという手法がとられています。
価格変動がなく、土地や物件の詳細情報を参照しながら手軽に安心して投資できる点が、若年層や貯蓄層を取り込み、人気を集めています。
株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングとは、非上場企業への投資の対価としてその未公開株式を取得することができるクラウドファンディングです。
株式投資型クラウドファンディングにより、将来的な成長が見込まれる企業に対してエンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)に先駆けて出資することが可能となります。
取得した未公開株式はその時点では自由に売買ができず、投資先の企業がIPOやM&Aなどイグジットをした場合にのみ自由に売買ができるようになります。
日本ではまだイグジットを果たした企業はありませんが、欧米では法律の制定から約4年でイグジットを果たした事例もあります。
金融商品取引法が改正され、電子募集取引の要件について定められたのが2015年であるため、日本でもそろそろイグジットをする企業が出てくるかもしれません。

クラウドファンディングの法律
クラウドファンディングは様々な種類がありますが、適用される法律で分類すると、その性質を明確に区分することができます。
融資型クラウドファンディング及び株式投資型クラウドファンディングは金融商品取引法の適用範囲となっています。
金融商品取引法は、昭和23年に制定された証券取引法を改題し、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にすることを目的に制定された法律です。
金融商品取引法は、クラウドファンディングの事業者参入が促進されるよう、平成26年5月に改正が公布され、平成27年5月に改正を受けた政令が内閣府より公布されました。
引用:「金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年法律第44号)に係る説明資料」
第二種金融商品取引業が、信託受益権の売買、売買の媒介、募集の取扱い、あるいはファンドの自己募集、募集の取扱いを行うもので、クラウドファンディング事業を運営する場合に必要な免許となっています。
不動産クラウドファンディングに適用される法律は、不動産特定共同事業法です。
不動産特定共同事業法は事業者が投資家から集めたお金でファンドを組み、不動産を運用し、得られた収益を投資家に分配する「不動産特定共同事業」における、業務の適正な運営と投資家保護に関する仕組みを定めた法律です。
不動産を証券化し、小口の商品に切り分け、複数人で共同運営するというアイディアは元来、不動産を金融商品から切り離し、所有物として扱うことを目的に生まれたものです。
物件に関してもその例外ではなく、用途を含めて登記をする必要が出てきて、登記された物件が不動産と定義され、国土交通省の管轄下に入ることになりました。
平成29年の改正で、証券化された不動産商品の電子取引、すなわち不動産クラウドファンディングについて言及されました。
この改正と平成31年に定められた電子取引業務のガイドラインをきっかけに、不動産クラウドファンディングの事業者が増えていきました。
法律を踏まえた上で、融資型クラウドファンディング・株式投資型クラウドファンディングは金融商品、不動産クラウドファンディングは細分化された不動産商品として捉えると、両者の違いが理解しやすります。
クラウドファンディングのメリットと注意点
クラウドファンディングのメリットやデメリットとは何なのか。クラウドファンディングは、従来の資金調達・投資とは何が異なるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

少額かつ短期での運用が可能
クラウドファンディングは不特定多数から少額の資金を募るものであるという性質上、無理のない額での投資が可能となっています。
投資額が少なければその分貸し倒れなどの不測の事態が起こった際のリスクも軽減できます。
また、クラウドファンディングの案件は、3カ月~1年ほどのスパンのものが多く、運用に5~10年ほどかかる金融商品と比べて極めて運用がしやすいといえます。
高い利回りを得ることができる
クラウドファンディングの場合、投資家は投資した金額(償還金)と合わせて5~10%以上の高い利回り(分配金)を、リターンを得ることができます。
日銀のマイナス金利政策により、金融機関に預け入れて得られる利回りは0.01%程度ですが、クラウドファンディングでは非常に高い利回りを得ることができます。
投資に関する特別な知識が必要ない
クラウドファンディングは一度投資したら、借り手がそのお金の一定期間の運用を終えるのを待てば、自動的にリターンが入ってくる仕組みとなっています。
価格変動リスクがなく、投資に関するノウハウが基本的に必要ないため、始める際の障壁が圧倒的に低いです。
安全な運用が可能
クラウドファンディングは貸し倒れリスクが最も小さい部類の投資商品です。
融資型クラウドファンディングの場合は、サービス開始以来貸し倒れ案件ゼロを誇る事業者も少なくありません。
また、不動産クラウドファンディングであれば、賃料収入という安定的な収益を見込めます。

約束されたリターンを確実に得られるとは限らない
クラウドファンディングは安全とはいえ投資である以上リスクはつきものです。
投資型クラウドファンディングの場合、融資先企業がクラウドファンディングで集めたお金で事業やプロジェクトを回すもうまくいかず、貸し倒れをする可能性があるということを念頭に置いておきましょう。
このような場合、運用後の金額が投資した金額を下回る「元本割れ」を引き起こす可能性があります。
投資型クラウドファンディングは、元本の保証がない上に、運用され終わるまでは自分で投資したお金をコントロールできません。
投資である以上やはり、クラウドファンディングにもリスクが付きものであり、必ずしもリターンが得られるとは限らないということを覚えておきましょう。
インターネットならではの不確実性
金融庁の指導により今では撲滅されてはいますが、クラウドファンディングではこれまでに、事業者が投資家に事実とは異なる誤解を招くような情報を開示し、問題となったことが複数回あります。
法制度が整備されており、詐欺の心配は現状ほとんどありませんが、一度投資をするとお金が返ってこないため、借り手が信頼に足る企業であるかを予め十分に検討する必要があります。
一獲千金は難しい
クラウドファンディングでの投資は手軽で、価格変動もなくリスクも少ない分、高額なリターンを得るのには不向きです。
クラウドファンディングはどちらかと言えばできるだけリスクを避けたい人や投資初心者に向いている手法です。
大きく儲けを出したい場合には、株取引やFXなど他の投資商品に挑戦してみましょう。
まとめ

クラウドファンディングは比較的手軽かつ安全な投資対象としても魅力的で、今後は投資型クラウドファンディングを中心に市場規模の更に拡大していくことが予想されます。
クラウドファンディングのコツは投資を考えている案件をしっかりと見極めることです。
投資したお金が戻ってこなかったり、リターンを得られない場合もあるため、借り手が信頼に足る企業であるかをきちんとジャッジしましょう。