【TREC FUNDINGから考察】不動産特定共同事業の特例事業とは?

不動産クラウドファンディングは、一口1万円~10万円と少額投資が可能なことやリターンが賃料収入・売却益を原資としたものであることが特徴ですが、投資スキームにいくつか種類が存在します。

数ある不動産クラウドファンディングの中でも1号事業がメジャーではありますが、投資家保護を目的として、法改正によって特例事業と呼ばれる事業形態が、平成25年度の不動産特定共同事業法の改正によって実現可能となりました。

特例事業を採用することで、投資家により安全な商品を提供することも可能となりますが、事例が極めて少ないため、「イメージがわかない…。」というのが正直なところだと思います。

この記事では、不動産クラウドファンディングの特例事業の特徴や登場の背景を不動産特定共同事業法の改正の変遷を踏まえ述べた上で、特例事業の不動産クラウドファンディングの仕組みを実際の事業モデルとしてトーセイ株式会社の運営する「TREC FUNDING」を引用して具体的に解説していきます。

不動産特定共同事業の特例事業とは

不動産特定共同事業の特例事業とは、事業者がSPC(特別目的会社)を設立することで倒産隔離を実現した投資スキームのことを指します。

倒産隔離とは不動産特定共同事業者が倒産した場合であっても、不動産事業のみをSPC(特定目的会社)を設立することで分離し、投資家は不動産に投資した分のリスクのみを背負うだけで済むようにする仕組みです。

一方でSPCとは、Special Purpose Companyの略称で、企業の設立する特別目的会社のことです。

参考:「SPCとは?クラウドファンディングとの関係は?特徴や利用するメリットを解説

SPCは不動産証券化の際や、債券の発行など資金の流動のために設立されます。

SPCはある特定の役割のみを果たすためだけに設立されたペーパーカンパニーに過ぎず実体がない上、財務省の管轄下に置かれているため、事業活動ができません。

特例事業の運営の主体である事業者は3号事業者と呼ばれ、SPCを設立し、不動産の所有権をSPCに移管することができます。一方、契約の媒介・仲介として機能する事業者は4号事業者と呼ばれます。

3号事業者は、宅地建物取引業の許可を得て不動産クラウドファンディング事業を運営します。

宅地建物取引士を配置する必要はありませんが、みなし宅地建物取引業者を設置する必要があり、営業保証金の供託、受領手付金額の制限などの業務規制の対象となります。

なお、特例事業における不動産特定共同事業の権利には金融商品取引法が適用され、みなし有価証券として扱われ、同法の規制対象となります。

特例事業の必要性が顕在化したのは、不動産特定共同事業の1号事業者の倒産の際に、莫大な債務に伴う被害を受ける投資家が後を絶たなかったことがきっかけでした。

じゅうらいの不動産特定共同事業法では「1号事業者の不動産に投資する=1号事業者のすべての財産に対して責任を負う」という構図ができあがり、投資家保護の枠組みの整備が急務となりました。

この課題を解決したのが平成25年度の不動産特定共同事業法の改正です。

参考:「不動産特定共同事業法をわかりやすく!許可取得のためにクリアすべき要件とは

この改正によって、既存の1号事業に加えて特例事業の展開が可能となりました。

事業者が投資家から資金を集め、不動産を取得・運用、得られた収益を分配するという基本的な仕組みは同じですが、1号事業との違いは事業者によって取得された不動産が、設立したSPCに譲渡される点です。

出典:国土交通省「不動産特定共同事業(FTK)の概要」

1号事業では不動産の所有・運用はすべて事業者が担いますが、特例事業の場合は不動産の所有・運用をSPCが担うことで、投資家は不動産のみに対して責任をリスクを負うことが可能となり、事業者の倒産リスクを最小限に抑えることができます。

SPCは収益の分配を専門で担いますが、実際に不動産取引業務・契約締結の勧誘業務を行うのは特例事業者自身となります。

TREC FUNDINGで見る、特例事業に基づく不動産クラウドファンディング

日本国内における特例事業スキームの不動産クラウドファンディングサービスは、トーセイ株式会社の運営する「TREC FUNDING」のみです。

TREC FUNDING

「TREC FUNDING」は、国内初の特例事業スキームを用いたクラウドファンディングサービスです。

トーセイ株式会社は不動産特定共同事業法の特例事業者(3号事業者)としてのライセンスを取得し、運営しています。

特例事業により運営される不動産クラウドファンディングであるTREC FUNDINGは、倒産や貸し倒れなどのリスクが極限まで抑えられており非常に安全であるため、投資家からも人気を集めています。

実際、8/29に募集が開始された第1号ファンドは募集開始から40分ほどで完売しました。

参考:「「TREC FUNDING」第1号ファンド 約40分で即時完売

TREC FUNDINGの場合、運営会社であるトーセイ株式会社が、不動産特定共同事業法の特例事業を行う3号事業者及び契約の媒介を行う4号事業者に該当します。

トーセイは特例事業に基づきSPCを設立し、現物不動産を委託します。

1号事業と異なり、投資組合とのやり取りや委託された現物不動産に関わる業務、金融機関とのやり取りなどをすべてSPCが引き受けます。

出典:TREC FUNDING「「トーセイ不動産クラウドファンディング」の仕組み」

トーセイは投資組合とは直接金銭などのやり取りをせず、SPCと取引します。

トーセイはアセットマネジメント業務や匿名組合契約の締結勧誘、子会社を通じた建物管理・テナント対応・賃料管理などを行います。

「TREC FUNDING」に見る、特例事業の契約~不動産売却までのプロセス

「TREC FUNDING」をもとに、特例事業を用いた事業運営について見ていきましょう。
※ここでは、すべての不動産クラウドファンディングサービスにおいて導入されている優先劣後構造を採用したファンドのビジネスモデルを参考に見ていきます。

トーセイが厳選・購入した物件をSPCが匿名組合から受けた出資で購入し、ファンドの運用を開始します。

SPCを設立後、サイト内で投資家から出資を募集し、出資金が集まり次第SPCが特例事業者の購入した物件を購入します。

ファンド運用開始後に3号事業者がバリューアップ工事やリーシングなどを行い、不動産の価値と稼働率を向上させます。

運用中に生じる不動産の賃貸利益を元手としたインカムゲインを投資家に分配しつつ、さらに不動産市況を鑑みたうえで売却し、そこで得られたキャピタルゲインをさらに投資家へと分配します。

 

匿名組合の締結・不動産への出資

特例事業ではSPCの保有する不動産に対して投資組合と事業者が共同で出資するという形態を取ります。

その際、投資家は「優先出資」として不動産に出資し、その残りの持分については「劣後出資」として事業者が出資します。

出資受付後、不動産の運用が開始されますが、SPCが担う役割はあくまでも不動産の保有のみです。

一方、リースや修繕など取得した不動産の価値を高める管理業務に関しては事業者が行います。

分配の際、投資家はSPCの保有する不動産の賃料収入から得られたインカムゲインや売却から得られたキャピタルゲインを事業者と分け合うという形をとります。

投資家への分配が完了すると、劣後出資者である事業者は残りの分配金を受け取ると同時に運用報酬(アセットマネジメントフィー)を受け取ります。

不動産の売却

ファンドの匿名組合契約が終了するまでに事業者は投資対象の不動産を売却します。

契約終了後にまず出資元本の返還を行いますが、売却益が生じた場合、優先出資者(投資家)に対して分配金を支払います。

特例事業の優先劣後スキームにおいて、売却損が発生し、劣後部分が毀損する場合は、劣後出資者(事業者または他投資家)の出資額の範囲までは劣後出資者が優先的に出資元本を負担します。

一方、売却時損失が劣後出資額以上の際は、投資家の出資元本が毀損します。

万が一事業者が倒産してしまった場合でも、特例事業スキームでは投資対象の不動産のみが分離した状態であるため投資家を保護するための仕組みが整っています。

このように、特例事業スキームを用いることで不動産事業者としてのノウハウを生かしつつ、より安全性の高い商品を投資家に提供することができます。

まとめ

この記事では不動産特定共同事業の特例事業について「TREC FUNDING」の事例を踏まえて解説してきました。

特例事業では、投資家に対して1号事業よりも低リスクな投資商品を組成することができます。

また、不動産の価値を高めての事業運営が可能で、培ってきた不動産事業のノウハウも生かすことができます。

今のところ1号事業がメジャーですが特例事業での展開も可能なため、不動産クラウドファンディングへの参入を考えている場合はシステムを開発している企業や弁護士にまずは相談してみてください。

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