クラウドファンディングは、金融とテクノロジーの融合であるFintechに分類されますが、従来の資金調達手段である融資やエクイティファイナンスなどの手法と比べ、その優位性はどこにあるのでしょうか。
この記事ではクラウドファンディングの活用を検討している事業者の方へ、クラウドファンディングを活用することのメリットやクラウドファンディングで実現できることを解説していきます。
そもそもクラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、インターネットを介した資金調達の方法です。
crowd(群衆)とfunding(資金調達)を組み合わせた造語であり、オンラインで不特定多数の人々から資金を調達することができます。
借り手は、サイト内で資金を集める目的やプロジェクトの内容をサイト上に公開し、投資家の賛同を募ります。
投資家は一口一万円など少額での投資が可能となる他に、例えば購入型のものであれば借り手がプロジェクトや事業で生み出した成果物、投資型のものであれば利回りに応じた金銭的なリターンを得ることができます。
つまり、お金を貸したい人とお金を借りたい人をインターネット上で結ぶ手段がクラウドファンディングと呼ばれます。
クラウドファンディングはファイナンスの概念を変えつつある
従来の金融と言えば中央集権的で、金融機関から精査を受けて資金を借り入れることが主流でした
しかし、ここ数十年のIT革命やインターネットの普及で、金融も徐々に民主化されてきました。
そこで生まれたのが、金融とテクノロジーの融合を意味するFintech及びそれに属するサービスです。
クラウドファンディングもその1つであり、今注目を浴びつつあります。
日本で一般的に認知されているのは、プロジェクトをサイト上で公開し、それに対する資金を集めてリターンとしてその成果物であるモノやサービスを支援者に分類する購入型のものですが、
実は投資型クラウドファンディングが、クラウドファンディングの市場規模の9割を占めています。
投資型クラウドファンディング市場は毎年30%以上の成長をしており、案件も多岐に渡っており、既存の金融機関では対応できない素早い資金調達を可能にします。
資金調達側の企業にとってクラウドファンディングを活用することは大きな利益をもたらします。
クラウドファンディングを企業が活用するとこんなに素晴らしいことが!
では、資金調達の手段としてクラウドファンディングを活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
金利支払いの回避
言わずもがな金融機関のビジネスモデルは借り手からの金利収入を得ることです。
金利というのはレンタル料のようなもので、資金調達元の事業主には、借りた分に上乗せして金融機関に返済することが求められます。
一方クラウドファンディングの場合は貸し手に対して金利を支払う必要性が生じません。
金利を支払わなくても資金調達が可能となった背景としては、投資型クラウドファンディングを支える法制度が整備されてきたことが挙げられます。
・不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングの場合は、不動産商品の小口化を促進する不動産特定共同事業法が幾度となく改正されてきたことにより、普及が促されてきました。
引用:不動産特定共同事業(FTK)法の概要 – 国土交通省
元々の不動産特定共同事業は、資本金1億円以上から成る1号事業者と、1号事業者と投資家を媒介・仲介する権限を持つ2号事業者から構成されていました。
しかし、1号事業者の所有する不動産への投資は、実質的に1号事業者そのものへの投資を意味し、1号事業者が破産すると、投資家は投資した額に応じた莫大な損失を被るという事態が起こっていました。
このリスクを低減するために平成25年度の法改正です。この法改正では特例事業と呼ばれる措置が設けられました。
特例事業の場合、前述の1号事業者は3号事業者に、2号事業者は4号事業者へと置き換えられます。
この特例事業により、3号事業者が倒産した場合であっても不動産事業のみをSPC(特定目的会社)を設立することで分離し、投資家は不動産に投資した分の損失を被ることがなくなり(倒産隔離)、借り手も、貸借対照表に自社で所有する不動産の出した損失を計上する必要がなくなりました。
また、平成29年の改正では初めて電子取引に関するルール、つまりクラウドファンディングに関するルールが明確に定められ、不動産クラウドファンディングに踏み切る事業者が増えてきました。
・融資型クラウドファンディング
一方、融資型クラウドファンディングの場合、金融商品取引法の改正が普及を後押ししてきました。
従来であれば、新しい事業を始めるにはどうしても金融機関から借り入れること必要がありましたが、銀行はどうしても借り手の過去の実績をもとに貸すかどうかを判断するため、確実に融資を受けられないケースが存在しました。
しかし、平成26年の金融商品取引法の改正によって事業主はインターネットを介して個人投資家から借り入れることが可能となり、融資型クラウドファンディングが徐々に浸透していきました。
融資型クラウドファンディングは、投資家から集めたお金を有価証券や事業に投資する、「集団投資スキーム」に該当し、事業者はまず初めに、第2種金融商品取引業者への登録をする必要性が出てきました。
参入の障壁も法改正で下がってきており、2015年の法改正で、「第一種少額電子募集取扱業」と「第二種少額電子募集取扱業」が新たに設定されました。
「第一種少額電子募集取扱業者」は、最低資本金が5000万円ないと認可を受けられませんでしたが、1000万円以上で登録を受けられるようになりました。
更に、「第二種金融商品取引業者」への登録が完了した事業者は、「集団投資スキーム持分」を用いた電子募集取扱業務のために、500万円の資本金を用意するだけで済むようになりました。
このように、法制度の改正によって事業の運営コストが下がってきて、事業者は金利を取られない資金調達の方法であるクラウドファンディングに参入できるようになったのです。
借入額を大きくできる
クラウドファンディングを活用するもう1つのメリットは、借入額を大きくできることです。
企業の実施する不動産融資の方法として、メザニンローンという手法が用いられることがあります。
メザニンローンとは、不動産を担保としたローンを得たいときに、自己資金(エクイティ)と銀行からの融資(シニアローン)では足りない場合、その差額を埋めるために貸し出されるお金です。
メザニンローンは劣後ローンに分類され、シニアローンよりも返済の優先度が低いです。
このシニアローンの返済にクラウドファンディングで調達した資金を充て、また更にメザニンローンを借り入れるという手順を繰り返すことで莫大な額の借り入れが実現できます。
メザニンローンによって、銀行から融資の上限が大きいとみなされ更に大きな額を調達することができるのです。
まとめ
この記事では、事業者が資金調達の方法としてクラウドファンディングを活用することのメリットを解説してきました。
クラウドファンディングは今後も成長が期待される分野で、これまで時間のかかっていた資金調達をスピーディーに完了させることができる手段です。使い方次第では事業のさらなる成長を見込めます。
金融機関からの借り入れが難しいと感じた場合にはぜひ検討してみてはいかがでしょうか。